「今日もいい日を、いい眠りを」

【ゆらぎと眠り】のセラピスト浅沼瞳です。二宮町在住。サインマップ、リズムナンバー、ミントと。心身と数の探究ブログ。

ヤマニ醤油のおばあちゃん

f:id:hotomo9:20220207205904j:plain

先週末、二宮に移り住んでから愛用している「ヤマニ醤油」の「紫」を買いに行った。うっかり週末ということを失念していて、開いてないかも、と思っていたら、門が開いていたのでそのままおじゃましてみた。門の入口近くに事務所があって、いつもどおりベルを鳴らしてみたけれど気配なく、母家の方へ向かうと母家のチャイムの横に「耳が遠いので何度もノックしてください」と貼り紙があった。それでは、と、はじめは控えめに3、4回ノック。反応なし。もう一度ノック。強めにノック。ノックする場所を変えてしっかりノック。もう一度。もういっかいノックしようかな、と思ったら、遠くの方から、はーい、と声がしたのでホッとひと安心。しばらく待っていたらガチャリとドアが開いて、いつものおばあちゃんが出てきてくれた。以前は少しお話をしていたら、もしかして前にもいらっしゃったことがある?と少しずつ思い出してくれていたけれど、そうもいかなくなっていらして、お醤油を買いに来たことをくりかえしお話をして、私がお醤油を買いにきたんだと理解してくれた。前に訪れた時は夏の終わりで、4ヶ月前。その時よりも一歩の足どりがゆっくり、じっくりになっていて、それでも億劫がらず歩いて案内をしてくれた。 事務所のカギ穴も改善されていて、スッと開いて、どうぞと中へ通してくれた。大きなテーブルの上にオリコンが置いてあって、そこから3本お醤油を出して、そのうちの1本を、これが良さそうと言って前に出してくれた。ありがとうございます、と言ってレジに向かうと、おばあちゃんがじっくり、一歩いっぽ歩いて、引き出しに手をかけた。その引き出しの中にはビニール袋が入っていて、きっとお醤油を持って帰るようの袋だなと思ったので、袋ありますよ、そのままいただいていきますと言おうとしたけれど、言えなかった。おばあちゃんにとって、その引き出しに手をかけること、引き出しを引き出すこと、中にあるビニールを一枚取り出すこと、どんなにたどたどしくても、そのひとつひとつの手の動きが命と直結していて、生命力の稼働スイッチそのものだった。良かれと思ってそれを止めてしまうことはとてもできなかった。むしろ、ひとつひとつの動きを眺めていたくって、そうしていた。見ている間によぎったのが生前の祖母の姿。ヤマニ醤油のおばあちゃんのようにカートを押しながら、周りには、危ないからひとりで出歩かないでと言われながらも、近くのスーパーまでひとりで買い物に出かけてはしょっちゅう怒られてた。怒られてしょんぼりしているかと思ったら、チラッと私を見ておどけた顔を見せてくれたので、私はテーブルの下で小さくガッツポーズをして、ふたりで笑いあった。転倒するリスク、怪我をするリスクに備えて安静におとなしくする。ゆっくり慎重に、じっくりなら動けるのに、動かずにいる、まわりがやってしまう。生きるために生きているのに命を使わなずにいるそれは、わたしには、生命力そのものをそぐように思えてならない。動きたいと思っているかは瞳を見ればわかる。宿ってるなーと、わかる。わたしがいつかそうなった時に、祖母やヤマニ醤油のおばあちゃんの姿を、もしかしたら覚えてはいられないかもしれないけれど、きっと生命力のどこかでは忘れずにいるだろうと思う。また買いに来よう。ビニール袋もいただこう。事前に予約もできるんだって。なんてったって、こんなにいい塩梅のお醤油ってなかなかない。旨味が出すぎず、かといって控えめでもなく、炒めてよし、煮てよし、もちろんそのままかけてもよし。素材の味、できあがった料理の味を支えてくれるお醤油です。たしか吾妻山に登る途中にある商工会の売店にも置かれていたような気がします、たしか。二宮にお住まいの方のみならず、しみじみ滋養になる味わいをご賞味ください。